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算数は,宇宙工学にも生かされている!

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

関連情報URL:http://www.jaxa.jp/

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

人工衛星の速さについて

地球の周りを回るたくさんの人工衛星は,天気予報で使われる気象観測を行ったり,カーナビなどに使われる位置情報を送信したり,衛星放送の通信を行ったりと,いろいろなところで私たちの暮らしを便利にしてくれています。月もまた,人工ではないですが地球の衛星の1つになります。これら衛星の運動も,「円周」「速さ」など,小学校算数の知識を使って求められる部分があります。
衛星の中でも,赤道上空で地球の自転に合わせてぴったりと同じ速さで回る人工衛星を,地上からは止まっているように見えることから「静止衛星」と呼びます。下の図は,衛星が地球の周りを回る様子を図に表したものです。衛星の進む道のりは,地球の半径と衛星の高度を合わせた長さを半径とする大きな円の円周と考えることができます。静止衛星の場合は,地球が1日(約24時間)で1回転する速さとぴったり同じ速さで進みます。つまり,衛星が地球の周りを24時間で1周する速度にすれば,その衛星は静止衛星ということになります。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

円軌道の場合,衛星の進む速度は,次の式で求めることができます。
速さ=(398600/(6378+H))1/2
ここで,398600(km3/秒2)は地球の重力についての定数,6378(km)は地球の赤道半径,Hは人工衛星の高度を表しています。
つまり,地球の周りを回る人工衛星の速度は,高度が決まれば1つに決まることになります。また逆に,ある速さの物体が地球の衛星として成り立つ高度はどれぐらいか,速度から求めることもできます。

人工衛星の高度について

衛星の進む道のりは,大きな円の円周と考えることができるので,その道のりは5年生で学習した円周の公式「円周=直径×円周率」で求めることができます。つまり,「円周=2×(6378+H)×3.14」となります。
ここで,6年生で学習した速さに関する公式「速さ×時間=道のり」に,今まで求めたものを当てはめていきます。
速さ… (398600/(6378+H))1/2
時間… 24時間=24×60×60秒
道のり…2×(6378+H)×3.14
ここから,静止衛星の高度は約36000kmになることが求められます。また,静止衛星の速度が秒速約3.1kmであることも求めることができます。 この計算は静止衛星の場合で考えていますが,例えば月の場合,地球の周りを1回りするのにかかる時間は約27日間になります。時間を約27日間として考えると,地球から月までの距離(高度)や,月が地球の周りを回る速度を求めることもできます。衛星の高度と,速度と,周期(1回転するのにかかる時間)の関係は,下の表のようになります。

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上の式を解くには平方根の学習が必要で,小学校算数の範囲を超えてしまいます。ただ,月の速さや周期(※)など,事実として分かっている値や,あらかじめ求めた人工衛星の速度や高度などを与えることで, 「円周」や「速さ」の学習内容だけで計算することができるようになります。

※月の速さ:公転速度,月が地球を一周する周期(≒新月から次の新月までの時間):公転周期。どちらも図鑑などで調べることができます。

小学校算数の学習内容にあった進め方について

先に説明したように,小学校算数の学習範囲である「速さ×時間=道のり」の関係だけでは高度を求めることはできません。そこで,児童用の職業シートの流れでは,最初から衛星の高度を与え,その数値を使って静止衛星の「速さ」を求めさせるようにすると,「円周」や「速さ」といった小学校算数の学習内容を使って考えることができます。 計算をしやすいように,以下のような,がい数の値を使います。
◆地球の半径…約6400km
◆静止衛星の高度…約36000km
◆静止衛星が道のりを進むのにかかる時間…約24時間=86400秒
まず,静止衛星の進む道のりは,地球の中心から静止衛星までの高さを半径とする円の円周であることを図で確認します。
次に,地球の中心から静止衛星までの高さを求めます。
「地球の中心から静止衛星=地球の半径+静止衛星の高度=6400km+36000km=42400km」となります。
この半径を使って,衛星の進む「道のり」を,円周の公式を使って求めると,「円周=直径×円周率=42400×2×3.14=266272km」となります。
また,静止衛星は地球が1日(約24時間)で1回転するのと,ぴったり同じ時間をかけて,この道のりを進んでいる事実を確認し,道のりを進むのにかかる時間は24時間=24×60×60=86400秒となることを確認します。
「道のり」と「時間」が分かったので,これをもとに衛星の進む「速さ」を,速さの公式を使って求めると,
「速さ=道のり÷時間=266272÷86400=3.08…」となり,衛星の進む「速さ」はおよそ秒速3.1kmであることが求められます。
地球の重力についての定数や,平方根の計算などを省いていますが,このように考えることで児童も算数で習った知識だけで考えることができます。衛星の速さや高度などの量感に触れたり,算数で学んだ学習が宇宙工学でも生かされていることが少しでも実感できたりすればいいなと思います。